vol.2 樽のかたち
樽の原型は、丸太をくりぬいた胴に皮のフタをしたものと思われます。そして、使ううちに丸太が割れ、締め上げ修理に使った木などの皮が、タガとして進化したの
ではないか?
北方ヨーロッパの民族により発明された樽は、時を経て他の木工技術(造船技術、車輪製造など)と融合しながら進化し、現在の形になりました。

さて、樽のデザインのお手本となったのはなんでしょう。
思うにこれは卵ではなかったのでは…
それでは、樽のどこがデザイン的に優れているのでしょう?

メリット1 頑強さ
3D ダブルアーチ構造で、あらゆる方向からの荷重を支え、衝撃を分散します。段積みしても上からの大きな荷重によく耐えます。

メリット2 転がりやすく、扱いやすい
大きく重い樽ですが、コツを覚えると扱いが大変簡単です。

メリット3 澱引きに便利
ワインでは沈降した澱が樽の胴中心部に集約され澱引きにとても便利です。また、補填の際、胴のふくらみがワインを満杯に満たすのを容易にするメリットも。
スピリッツの場合、樽内の原酒が自然の大気圧を受け、樽の3Dアーチ構造ゆえに大変ゆっくりと対流し攪拌、均等化されます。

メリット4 補填に便利
樽は横置きにすること、干し穴(酒を充填、排出する穴)を胴の真ん中の一番ふくらんだところにあけることにより補填が大変便利かつ的確に行えます。ワインの貯蔵熟成では空気との接触を避けるためいつも樽は満杯に保たれます。3Dアーチのメリットで干し穴の部分にまず空寸ができます。

卵の殻をとおして呼吸し、健やかに育つ胎児。樽の掌に抱かれて熟成する原酒。共通点は多々見られます。

戻る>>